『北の防人』第九十一師団戦闘状況を贈るに当って。

 前段の戦闘状況は、吾が第一砲兵隊長であられた加瀬谷部隊長の手記を、当時部隊本部に居られた中町仁郎氏(下士官候補教官)が『北の防人』第九十一師団第一砲兵隊部隊史として編纂発行された本の中から、同氏のお許しを得て、ソ連の記録部分や専門的な部分を除き、一般の方でも読んでお分リ戴けるように編集し直しし、戦闘部分を重点に記したものです。従って当時戦闘に参加された方々、或るいわ専門的な方がお読みになると、色々とご批判もあろうかと思います。
 又後段は、私の実体験を記しましたが、何せ四十五年振りに纏めてみたものものですから、多分に記憶違いの部分もあろうかと思いますが、戦後五十年を経過して見て、今までこうした北千島に関する状況が、あまリ新聞等に発表されなかったし、この頃千島返還運動が行なわれても、主として南千島のことは記事にされるが、北千島のことは一向にマスコミニ取り上げられません。以上のことから、一体自分たちのやってきたことは何だったのかという思いと、五十年を節目に、北の守りに就いて犠牲になられた数多くの方々の、せめてもの慰霊にならないかと考えて、発表することに致しました。